一人称のエネルギーから見るコストパフォーマンス(定期更新:8)
「コスパ最強の○○」という売り文句が今やどこでも見られるこの昨今、なんでもかんでも効率化を図ろうとする悪習にひとつのアンチテーゼを提示しよう。今回は口語で用いる最もコスパの良い一人称を簡易的に調べていく。ぜひこの記事を参考に、明日から一人称を改めると良いだろう。責任は一切負わないが。
❶定義
コストパフォーマンス:費用対効果…支出した費用によって得られる成果。(デジタル大辞泉)
いま、
- コスト…後述の音韻エネルギーの数値[A]
- パフォーマンス…一人称を表す言葉の音節数[n]
と定義することにより、コスパ指数:e=A/n と定義する。つまり、単位音節数あたりの音節エネルギーの値でコスパを量るのである。小さいほうがコスパ良。
- 音韻エネルギー…母音:3,有声子音:2,無声子音:1として、さらに接近音・叩き音・鼻音:0.8,破裂音・破擦音:0.5,摩擦音:0.3
と数値化し、前者と後者の数値を足すことによって定義する。
(例:さ[sa]は、無声子音の歯茎摩擦音sと母音aの組み合わせにより、 A=1+0.3+3=4.3 となる)
❷一人称
下記の一人称を考察していく。
私 Watashi [β̞ataʃ]
僕 Boku [bok]
俺 Ore [oɾe]
拙者 Sessya [séʃa]
某 Soregashi [soɾeɡaʃ]
余 Yo [jo]
我 Ware [β̞aɾe]
儂 Washi [β̞aʃ]
ワイ Wai [β̞ai]
おい Oi [oi]
吾輩 Wagahai [β̞aɡahai]
小生 Shosei [ʃoːsei]
麿 Maro [maɾo]
あちき Achiki [atʃkji]
妾 Warawa [β̞aɾaβ̞a]
一部に母音の含まないものがあるが、実際の標準語での音を採用したためである。関西訛りでは全ての母音が発音される傾向が高いため、今回の論は適用できない可能性がある。
❸計算結果
❹考察
eの値から、最もコスパの良い一人称は「おい」とわかった。しかし九州男児でもない者がこの呼称を使うのは望ましくないだろう。したがって、「儂」や「小生」、「某」や「拙者」などを使うのが良い。この3つは無声子音の歯茎摩擦音[s]を共通してもつため、声帯を振動させたくない職業、例えば暗殺者などの勤務中の意思疎通にも適している。「おい」よりも出身地がバレにくいのも良い。
また、女性ならエレガントさや妖艶さを装うために「あちき」を用いるのも許容範囲だろう。
拙者は個人的に「我」が好きだが、定義の仕方が両唇接近音[β̞]と叩き音[ɾ]の同時出現には弱かったようでござる。ん、侍のような口調だって?それもそのはず、拙者は少し前まで浪人でござったからな。
Phylmer.M
(2023.05.03 追記・修正済)
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